佐賀ならではの時間や空間の楽しみ方など、通りいっぺんの観光では味わえない濃い深い情報満載です!  PR隊長のはなわさんや優木まおみさんがディープな佐賀へと誘います。

SAGA MAGA

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vol.3

今号の研究テーマ

ハートの瞳のムツゴロウさん

「うんがいのとた?」「とたがちゃ」
何を言っているのか分からないでしょう? 

 この会話は、昭和の時代、有明海沿岸域住民の日常的な会話の一コマ。では、訳してみよう。「うんがいのとた」とは「あなたのお父さんは、どちらへ行かれましたか」と尋ねている言葉。それに対して「とたがちゃ」というのは「父は、有明海の干潟に行っています」と返答している。全く予想できないようなまえうみ言葉である。今では、このような会話を聞くこともなくなり、少し淋しい気もする。この「とた」の会話、お父さんは、有明海のムツゴロウ獲りに行っているのである。


干潟のムツゴロウ

 ムツゴロウとは何ぞや? 全国区で有名なのは、人より大きいものから手に乗るほどの小さいものまで動物なら何でもござれのムツゴロウ(
畑正憲)さんだろうが、佐賀でムツゴロウといえば、有明海の干潟に生息するムツゴロウのことである。この干潟のマスコットは「ムッちゃん」とも呼ばれ、ジャンプや滑りなどの干潟ダンスも大得意、アイドル並みの人気を誇っている。


 ムツゴロウは伝統的な漁法で捕獲する。その方法は大きく分けて二通りある。鹿島地方では竿に紐と針を付けムツゴロウを引っかけて釣る「ムツカケ漁」が行われており、高度な技術が必要とされている。一方、佐賀地方では「タカッポ漁」が行われている。この漁は、仕掛けから捕獲まで時間のかかる漁法である。潮が引いた干潟でムツゴロウの巣穴を見つけ、そこに罠の筒状なものを入れ目印の棒を立て、潮が満ち、そして干潮を待つ。再び干潮になると、目印の棒を目当てに潟スキーと言う乗りもので干潟を巧みに滑り仕掛けた罠を回収する。外へ出られなくなったムツゴロウが傷もなく簡単に捕獲できる先人の知恵。これを「タカッポ漁」という。攻めるか待つか、同じ県内でも、地域が変われば漁法も変わるのがとても興味深い。


タカッポ漁

タカッポ


 ムツゴロウは、ハゼ科の魚で全長20㎝ほど、暗い緑色の肌に鮮やかな青の斑点があり、目は、少しで出ているが瞳は青いハートの形をしている。産卵時期ともなればオスが干潟でジャンプしてプロポーズをする。


ムツゴロウの蒲焼


 このアイドルも人間様にかかると、色んな方法で食される。代表的なものは「蒲焼き」である。生きたまま口から串を刺して素焼きに、醤油・みりん・酒・砂糖を調合したタレに、2~3回付けながら焼き上げる。佐賀県の郷土料理のひとつで焼き立てを食べるのが最高と言われている。その他、刺身やみそ汁の具にも用いられる。
有明海の干満の差は、6mほどあり、干潟の時には沖合5~7㎞までの広大な干潟が広がる。ここを棲み家とする珍しい魚がいっぱい居る。貴方も一度触れ合ってはいかが?


★ムツゴロウ
ハゼ科の生き物で、日本国内では有明海と八代海の一部にしか生息していない。水陸両生魚で全長は約20㎝。やわらかい干潟に穴を掘って棲んでいる。干潮時は巣穴から出てきて干潟表面の珪藻類を食べる。干潟で見られる時期は6~7月が最も多いが、暖かい天候の時は、巣穴から顔を出すこともある。5月~7月は産卵期にあたり、オスがメスにプロポーズする時に見られるジャンプの光景は、干潟の風物詩となっている。

ラボ主任研究員

有明海を撮るカメラマン

北村 和秀

KAZUHIDE KITAMURA

PROFILE

1950年7月16日、佐賀市川副町生まれ。高校卒業後、1969年2月、株式会社サガテレビに入社
最初の配属先は技術で開局の準備に携わった。その後、鳥栖支局・情報センター・福岡支社・報道制作と異動。2004年10月に番組制作会社のSTSプロジェクトへ出向、取締役、常務、2008年に社長を就任。2012年6月に退任。現在、佐賀市道祖元町で妻と二人暮らし。映像カメラマンを目指し、勅使河原和風会でお花を習い、フジテレビなどで照明を勉強、報道写真の狙い方などを教わって40数年。時々、これまでの写真を公開している。性格は、シャイで小粋ではにかみ屋。内気で内股で短足と、良いところなし。それでも頑張る年金生活者。別に職はなく、佐賀県障害者サポートセンターを応援する会会長、NPO法人MOTTINAIプロジェクト理事、(株)オフィスタカハシ取締役相談役など名誉職に就く。