佐賀ならではの時間や空間の楽しみ方など、通りいっぺんの観光では味わえない濃い深い情報満載です! PR隊長のはなわさんや優木まおみさんがディープな佐賀へと誘います。
vol.8
今号の研究テーマ
海苔物語 10月6日
今年も船を係留する浮き桟橋を共同作業で作りました。夏の間は撤去していた物ですが、岸壁から沖に60メートル両翼70メートルの巨大な浮き桟橋です。浮き桟橋を固定するのは直径76ミリの巨大なオレンジの合成支柱ですが、これを立てるのも勿論みんなで協力して立てます。僕は川副マリーナと呼んでます。
海苔物語 10月7日
台風避難で遅れていた支柱立ても午前中で終わりました。お昼からは海水を汲みに沖まで出ましたが、最近降り続いた雨の影響で比重が下がっているので、満潮時に沖まで行き吸水管を海底に沈め比重の濃い海水を汲んで来ました。
この海水は夏の間、採苗場で管理していた海苔の種が入ったカキガラを今度は海苔の採苗日まで各家で管理するからです。
海苔物語 10月13日
今日は漁期前の平成28年度海苔漁期対策講習会に参加しています。今年度は、今月17日と採苗日が決まりました。
海苔物語 10月16日
明日の採苗日に合わせて一家総出で海苔の胞子が潜り込んだ牡蠣殻を海苔網にぶら下げたラッカサン(ビニール袋)に一枚づつ入れていきます。
海苔物語 10月17日
昨日から牡蠣殻を入れた海苔網を積み込んだ漁船が、早朝から一斉に出港し、海苔の採苗漁場に向かいます。漁場に着くと素早く色とりどりの海苔網を張っていきます。お昼は網の高さ調整をし、帰るときには暗くなって来ました。
MEMO:有明海の海水の比重は、瀬戸内海が26~27度の比重であるのに対し、22~23度と非常に低いのが特徴です。この比重の違いで、海苔の硬さに差が産まれます。瀬戸内海などの海の比重が高い産地では、黒い海苔ができますが、硬い。 一方、有明海のように比重が低いと河川水が混じり柔らかくとろけるうまい茜色の海苔が出来上がります。有明海は、海苔の産地としては最高の環境をもった漁場なのです。
(http://www.ariake-nori.com/kodawari.html より引用)
海苔物語 10月18日
昨日、採苗を開始しましたが、今朝はどのくらい着いたか芽付きを特殊な顕微鏡(蛍光顕微鏡)で確認(検鏡)しに支所に組合員が集まって来ます。蛍光顕微鏡は海苔の種だけを光らせてくれる優れ物です。また、100倍視野(2.2ミリ)で1視野あたり8〜10個を目安とされていますので着いた組合員は、付き過ぎないよう急いで海に行きカキ殻を網から外します。
海苔物語 10月21日
採苗が上手く行かず心配していましたが、やっと適正芽付き(2.2ミリ中10個程度)になりましたのでカキ殻を外しました。今年は17日に採苗を開始しましたが、暖かく気温、海水温度など高く採苗環境があまり良くなく5日間もかかってしまいました。
海苔物語 10月23日
採苗解禁日から6日目、早朝から採苗場に来て人工干出作業終了です。昨日から雨が続いています。本来、海苔網の[干出作業]は基本1日2回干潮に合わせて網を乾かし小さい海苔芽を強くする事、珪藻や汚れの除去などです。普通は干潮に合わせて網の高さを吊り綱(海苔網を固定する綱で支柱一本に一つ付いています)で毎日上下させ調整して海苔網干出させますが、今日は小潮なので、干満の差が小さくまた雨なので人工的に吊り綱を絞り海苔網を水面から引き上げ干出をあたえます。
海苔物語 10月24日
毎日網洗い作業しています。洗う理由は肉眼では見えない海苔芽を守る為です。放ったらかしにしていると汚れや珪藻が海苔芽に覆い被さり光合成が出来なくなり大きくならないからからです。干出作業と並び網洗い作業は採苗には欠かせない大事な作業です。
採苗の時は海苔網30枚重ねますが、その海苔網の下にタイコと呼ばれているカバーを被せた箱舟をくぐらせエンジンポンプの水圧を上下のノズルから噴射し海苔網を洗います。写真はタイコの内側の10馬力のエンジンポンプと仕組みです。
海苔物語 10月25日
今日は海苔養殖をしている人には当たり前の事ですが、縁の下の力持ち的優れ物を紹介します。全国の海苔養殖は北は宮城県から南は鹿児島県ですが、大きく2種類の養殖スタイルに分けられます。水深の深い海でアンカーをうって海苔網を固定させるている[浮き流し養殖]と支柱を立て海苔網を固定させる[支柱養殖]に分けられます。佐賀県の海苔養殖は大浦支所を除いて[支柱養殖]を行なっています。
海苔網10枚張るのに支柱を66本立てるので、1漁家平均2500本〜3000本です。立てた支柱で1番の大敵がフジツボですが、放ったらかしにしていると海抜4メートルくらいまでビッシリ着くのです。フジツボが着くと[支柱養殖]の1番のうりの吊り綱を調整して海苔網の管理作業(干出など)が出来なくなります。そこで支柱の1本1本に入れるのが浮力がある丸い輪っかの[フジツボ落とし]です。昔は一個だけ入れて干満差を利用してフジツボを削ぎ落としていましたが、最近は水深の深い漁場には1メートルぐらいの棒の上下に一個づつ付いたダブルワッパを使うようになりました。シングルワッパは干満の差が大きい大潮の時は良いのでしが、干満の差が小さい小潮の時は海底近くの支柱にフジツボがビッシリ付いて大潮が来た時はすでに遅く削ぎ落とせなくなっているのです。たわいもない長文を読んで頂きありがとうございました。
(つづく)
●海苔ができるまで
(佐賀県有明海漁業協同組合ホームページより)
ラボ主任研究員
海苔師
川崎賢朗
KENROU KAWASAKI
PROFILE
有明海のことならまかせんしゃい! 有明海で海苔養殖を営む海苔師。有明海を知り尽くした男。川副中学校・佐賀東高等学校卒業。佐賀市川副町在住、1960年生まれ。
vol.1
民話「ワラスボが鯛に恋をした」vol.2
徐福さんと筑後川のアミ漁・エツ漁vol.3
ハートの瞳のムツゴロウさんvol.4
有明海の潮干狩りで出会った”海蝸牛”vol.5
先人たちの ”まえうみ天気予報”vol.6
まえうみ(有明海)は「生命の海」vol.7
海苔人日記「2016夏のクラゲ漁」vol.8
宝の海の海苔人日記・10月vol.9
宝の海の海苔人日記・11月vol.10
宝の海の海苔人日記・番外篇 ”さが海苔最高‼️”vol.11
有明海沿岸ではアカクラゲを食べる?vol.12
ヒゼンクラゲ(シロクラゲ)とビゼンクラゲ(アカクラゲ)vol.13
有明海に不思議な櫓(タワー)発見?!vol.14
干潟のなかの牡蠣礁~有明海は元祖”牡蠣の産地”