佐賀ならではの時間や空間の楽しみ方など、通りいっぺんの観光では味わえない濃い深い情報満載です!  PR隊長のはなわさんや優木まおみさんがディープな佐賀へと誘います。

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vol.9

今号の研究テーマ

宝の海の海苔人日記・11月

海苔って二期作なんですね。1回目は「秋芽網」と呼ばれ、12月中下旬まで。そのあとは「冷凍網」と呼ばれ、海苔芽が10cmくらいに伸びたところで網を冷凍庫に入庫し、海苔芽を冬眠状態にする方法です。 海苔って冷凍しても死なないんです。3月末~4月上旬くらいまで収穫が続きます。

海苔物語 11月5日
 昨日まで5枚展開をしていました。先月17日に、海苔網30枚重ねて1場所で採苗を開始して、10日ぐらいで10枚〜15枚重ね、2週間ぐらいで3枚〜5枚重ねと海苔の成長とともに段々薄くしていきます。海苔は、野菜と同じ植物ですから光合成をして大きくなります。海苔が伸び始めると、重ねた下の海苔網に光が入らなくなり、上の網に付いた海苔と下の網に付いた海苔に差が出るからです。また、5枚展開を開始するタイミングは二次芽(最初に付いた種を親芽、親芽から出た種)を放出しだした時なのです。


 今日から1枚張りを始めました。海苔は順調に成長しています。3場所に一旦5枚展開した海苔網ですが、2場所は冬海苔用(冷凍網海苔)、1場所の5枚展開網は、今度、秋海苔用に1枚張りにしていきます。海苔芽が小さいうちは弱いので、先ずは比重の高いく海苔が好む沖合いの漁場から始めていきます。3、4日間で約900枚を6漁場に1枚張りにしますので、臨時にお手伝いを頼んで乗り切ります。



海苔物語 11月6日
 今日も1枚張り(単張り)です。日に日に成長する海苔に合わせて、5枚展開の上から4枚はがし、別の漁場に1枚張りします。今日は臨時のお手伝い、男女11名で312枚1枚張をしましたので、クタクタになりながらの帰港でした。


海苔物語 11月12日
 昨日から冷凍網入庫作業をしています。近年養殖海苔は、二期作を行なっています。採苗から約1ヶ月で成長した「秋芽海苔(秋海苔)」と秋海苔の商品価値が無くなり、張り替える海苔、「冷凍網海苔(冬海苔)」に大きく分けられます。昨日からは、その冷凍網海苔用の海苔網を作っているんです。11月に入ってすぐ行った5枚展開漁場から3〜5センチに伸びた海苔網を陸上げし、乾き過ぎない様に注意をしながら、屋外や室内では、扇風機などで乾かしマイナス25度にセットした冷凍庫に保管しています。1日350枚程の海苔網を4日間乾かしますが、老若男女約15名が、乾き過ぎない様目を光らせ管理します。



海苔物語 11月18日
 やっと初摘みにこぎつけました。昨夜日付をまたいで初摘みに行って来ました。海上作業のお手伝いさんが集まらず、工場長も駆り出されました。勿論、帰港後は工場長を務めましたが、今年は大きな機械トラブルも無く先程無事終了しました。


海苔物語 11月19日
 海苔加工2日目。今日は自動生海苔異物除去洗浄装置のお話をします。平たく言うと、海から摘んで来た海苔からゴミを取ってくれる機械です。機械も2種類ありますが、仕組みは同じです。土台と水平に円盤を回し隙を造りますが、その隙間が1ミリの機械で1ミリ以上のゴミを取っり、取り残しをもう一台の機械で取りますが、その隙間はたったの0.1ミリです。その隙間をかいくぐった、しぶといゴミは板海苔になってからカメラや赤外線などを駆使した選別機ではねられて、最終的には人間の手で取り除かれ安心して食べられるのです。


海苔自動乾燥選別機


海苔物語 11月22日
 有明海で大変な事が起こっています。暖冬で海水温が下がらない、先日降った雨と一同にクリークから流された水の影響で比重が極端に下り病気が心配される状況です。この写真は、昨日友人から送られて来た物で、初摘みしたばかりの海苔網を吊り綱を操作して異常なほど高く吊り上げているのです。その高さは海抜3メートル、基本水位は2メートルですから、1メートルも高く吊り上げて干出(網を乾かす)をしているのです。干出時間は普通は2、3時間3メートルに上げると今、小潮(潮の満ち引きが小さい)だから6時間、1日2回の12時間です。


 この異常な程の管理をする理由は病気対策をしているのです。カラカラに乾かし干す事で予防、治療、になるからです。しかし、弊害もあります。海苔は本来は海水に浸かって育ちますが、乾かし過ぎると伸びが極端に悪くなったり、葉っぱが硬くなり、有明海特有の柔らかい食感も薄れるのです。しかし、放って置いたり何人かが低くかったりすると、病気の蔓延に繋がる大事な手入れ(吊り綱の作業)ですから、皆んなでやります。


 佐賀県は集団管理と呼んでいますが、早く寒波(この時期は神風)が来る事を祈るばかりです。 (つづく)

ラボ主任研究員

海苔師

川崎賢朗

KENROU KAWASAKI

PROFILE

有明海のことならまかせんしゃい! 有明海で海苔養殖を営む海苔師。有明海を知り尽くした男。川副中学校・佐賀東高等学校卒業。佐賀市川副町在住、1960年生まれ。