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vol.13

今号の研究テーマ

有明海に不思議な櫓(タワー)発見?!

 干潟の紅葉が最も美しい11月、そんな紅葉のむこう、有明海の沖合に不思議な櫓(タワー)をみつけた。これはいったいなんだ? 実は有明海の様々なデータをとり、漁業にいかしているとのこと。…さっそく、調べてみた。

東よか干潟のシチメンソウ


 佐賀の紅葉といえば、「シチメンソウ」。11月初旬から中旬頃に東よか干潟(干潟よか公園)へ行くと、赤く色づいたシチメンソウ群落を観ることができる。わたしが行ったのは、11月11日、はやくも紅葉のピークは過ぎてしまったようだったが、それでもまだ赤い絨毯のような状態になっていた。シチメンソウの下を歩き回っているカニたちの姿は夏よりも減り、もう冬の干潟になりつつあった。


 さて、視線をシチメンソウ群落から干潟の方に向けてみよう。



 干潟の上には野鳥が飛び、賑やかである。その干潟の向こうには海苔篊。すでに海苔養殖は始まっている。今年は10月20日に種付けが開始された。その約1ヶ月後の11月中旬(19日頃)からは「秋芽のり」の初摘みが行われた。11月29日には今季の初入札会が行われたようだ。今年11月の水温は例年より低かったこともあって例年より海苔出荷量は少なかったようだが、品質は比較的高く、単価は高めだったようである。果たして、今季も日本一の生産量を維持できるだろうか。色落ちや赤腐れのような問題が起きないことを祈りたい。
さて、望遠鏡で海苔篊(ノリヒビ)の先を見てみると・・・・(望遠なので画像がぼやけるが・・・)



 なにやら建物らしきものが見える。果たしてこれは何だろうか。
この建物らしき物体へ船で近くに寄っていると・・・・・



 4本足のおおきな櫓(タワー)だ。実はこのような櫓は、有明海のあちらこちらにある。筑後川や六角川、浜川(鹿島市)の河口などにもあり、沿岸からでもこの姿を観ることができる。ちなみに、写真は佐賀大学が設置しているタワーだ。九州国際佐賀空港の沖合約4kmの海域にある。それでは、この櫓(タワー)は何のためにあるのだろうか?佐賀大学のタワーを例に紹介しよう。



 タワーには階段がついており、そこから上へあがれるようになっている。ただし、実際にタワーに上るのはご遠慮いただきたい!! 
階段を上ると・・・プレハブの建物や怪しげな機器が並ぶ。これらは海または大気を測定するための観測機器である。最も重要なのは、この変な機器だ。



 多項目水質計と呼ばれる機器で、水温・塩分・濁度・溶存酸素・クロロフィル蛍光強度・pHといった「海水の性質」を測ることができるものだ。この機器が、タワーから海中に降りていき、海の状態を記録できる。佐賀大学の設定だと、海面から水深0.5メートルごとに海底まで測ることができる。人が常駐しているわけではないので、機器の上下作業は自動的に行われる。そのための電源であるソーラーパネルもタワーには備えられている。
 佐賀大学のタワーには、多項目水質計以外にも気象計(気温・湿度・気圧・風向・風速・日照時間など)を測っていたり、海底に流向流速計という装置があって、海水の流れを測っていたりする。すなわち、「有明海の健康状態をモニターしている」と言っても良いかもしれない。



 有明海をよりよく利活用するためには、有明海をよく理解しなければならない。また、有明海がいまどのような状況なのかを知らなければならない。有明海にある櫓(タワー)はそれらに一助となるような情報をとり続けているのである。


 このようにモニターされた情報は、携帯電話回線を利用して大学に送信されている。研究者はこれらのデータをもとに様々な研究を行っている。また、データの一部は公開されていて漁業者などに利用していただいている。




佐賀大学・有明海観測タワー 
http://www.ilt.saga-u.ac.jp/aripro/tower/index.html

または、
http://www.ilt.saga-u.ac.jp/COMPAS/OTinAriake/
にアクセスしていただければ、1週間の状況がグラフで公開しているので是非ご利用いただければ・・・・ といっても、漁業者、海苔養殖業者の方以外は、なかなか活用する機会はないかもしれない (^_^; ちなみに、佐賀県は県が管理しているタワーの情報を公開している。

http://www.ilt.saga-u.ac.jp/COMPAS/OTinAriake/
こちらはグラフではなく、テキスト形式で情報が公開されている。

ラボ主任研究員

有明海研究者

藤井直紀

NAOKI FUJII

PROFILE

1977年(昭和52年)生まれ。広島県広島市出身。広島東洋カープファン。生物海洋学研究者。国立水産大学校にて水産学を学ぶ。広島大学大学院生物圏科学研究科にて学位を取得。愛媛大学沿岸環境科学研究センター(通称:CMES)にて瀬戸内海の環境変化やクラゲに関する研究をしたのち、2011年2月から佐賀大学低平地沿岸海域研究センターに赴任。有明海の環境変化に関する研究に携わるとともに、研究者と一般市民をつなげる「サイエンスコミュニケーション」活動を行っている。研究に熱中するあまり未だ独身(?)。鹿島市を拠点とする任意団体「まえうみ市民の会」副会長。中国地方を拠点に活動するNPO法人ちゅうごく環境ネット副理事長。