佐賀ならではの時間や空間の楽しみ方など、通りいっぺんの観光では味わえない濃い深い情報満載です!  PR隊長のはなわさんや優木まおみさんがディープな佐賀へと誘います。

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vol.7

今号の研究テーマ

中村食堂から池田屋へ ”佐賀ちゃんぽん” 庶民の味を受け継ぐ

 今から約60年ほど前の話。佐賀市本庄町の佐賀大学正門側の交差点角にあった食堂をご存じだろうか。学生やサラリーマン、肉体労働のあんちゃんなどがこぞって訪れた人気の食堂があった。その食堂の味にほれ込んだ一人の男が、一念発起してつくり上げてきた佐賀ちゃんぽんをクローズアップしてみよう。

ちゃんぽん嫌いが一転、ちゃんぽんの虜に!


池田屋店主 池田信宏さん

 池田信宏さん(58)。池田屋の創業者である。佐賀大学東に夫婦で池田屋を創業して26年。二人三脚で歩んできた池田屋の2016年4月、愛着のある店舗から100mほど離れた場所に新しく店を構えて新たな一歩を踏み出している。


店主の池田信宏さんとちゃんぽんとの出会い
「小さい頃はちゃんぽんが苦手だったんですが、高校生の時、佐賀大学の近くにあった中村食堂で食べたちゃんぽんに衝撃を受けてから、ちゃんぽんが大好きになったんです。とにかく旨かったんです」と1970年代当時を振り返る池田さん。それからというもの、学生でありながら足繁く通い、店主夫妻から顔を覚えられるまでに。社会人になってからもその行動は変わらなかった。会社から遠くてもちゃんぽんを求めて通い続けた。


旧店内

中村食堂がなくなって困るのは「自分だ!」

 20年近く通った頃だろうか、愛着のある中村食堂の行く末が気になってきた池田さん。店主夫妻は80代の高齢、いつまでも店を続けるわけにはいかないだろう、と思いながら、ちゃんぽんを食べに通った。「レシピを教えてほしい」「この味を継承したい」と弟子入りを申し出る人も現れたが、店主夫妻は頑なに断ってきた。そして、ある日のこと、二人は言った。「池田君、あんたになら教えるよ。やってみらんね」 一番驚いたのは池田さん本人だった。しかし、ここで迷う術はなかった。なぜなら、中村食堂のちゃんぽんがなくなって、一番困るのは自分自身だったからだった。


池田屋ちゃんぽん 700円(うるめ、さば、昆布でダシをとったスープが自慢)


池田屋の誕生。池田屋のちゃんぽんをつくる決意

 会社員から一転、池田さんは中村食堂の味を継承すべく、会社を辞めた。「もう結婚もしていたし、小さい子供もいました。でも、家内を説得して二人で中村食堂が閉店してから2か月後、池田屋をオープンしました」。閉店した中村食堂とは目と鼻の先に空き店舗を見つけて、ちゃんぽんの伝授を受けての開業だった。元からの常連客には味づくりについて細かに感想を聞きながら、中村屋をベースにした池田屋の味をつくっていった。「味はこれで完成というものはないんですよ。和風出汁をベースに細かな微調整を重ねていきました。自分が舌に染み込ませた味を再現していきました」


池田屋店主の池田信宏さん、次男の遊さん

和風の出汁に中太のちゃんぽん麺。
いつしか佐賀ちゃんぽんの代名詞に。

 ちゃんぽんのおいしい食べ方というのがあるらしい。「野菜から食べる? 麺から食べる? スープから? 野菜と麺を一緒に取って食べるのがちゃんぽんの食べ方です」と池田さん。池田屋のちゃんぽんづくりを例に挙げると、油を温め野菜を炒めてスープを入れてさらに炒める。これには麺を入れずに、丼の中で一つになる。こうしてできたちゃんぽんは、野菜、麺、別々に食べるよりも一緒に食べることで味が重なり合うというのだ。なるほど! 

旧店舗最終日に夫婦で食べたちゃんぽんの味。
これからは次男遊さんが…。


池田游さん

 佐賀んもんにとってはお馴染みになった池田屋のちゃんぽん。常連客に加えて新しいお客も増えていくと、店が手狭に。そして、嬉しいことに次男の遊さんが後継者として店に一緒に入るようになり、厨房も定員オーバー気味。


佐賀市赤松町241―39

 そこで池田さんは、店から100mほどの場所に新店舗を建設し、この4月再出発のオープンを果たした。「この辺りは道路拡張などで工事が続いているけど、ウチは道路関係の移転ではなく、自力移転よ(笑)。新しい店は気分いいけどね、最初の店の営業最終日は、お客様を送り出した後、嫁さんとちゃんぽんを作って食べたよ」。二人で始めたお店の締めは、夫婦二人で…。


新しい門出は遊さんと共に。「後を継ぐということにプレッシャーを感じる」という遊さんは、そのプレッシャーを起爆剤に新しいことにもチャレンジしていく。


現在の店内

MENU

池田屋
住所 佐賀市赤松町6-11
電話 0952-22-7508
営業 11:30~15:30/18:00~21:00
ホームページ http://www.ikedaya-saga.com/

うまかもんラボ研究員

SAGAMAGA編集長

庄島瑞恵

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