佐賀ならではの時間や空間の楽しみ方など、通りいっぺんの観光では味わえない濃い深い情報満載です!  PR隊長のはなわさんや優木まおみさんがディープな佐賀へと誘います。

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 佐賀市大和町名尾地区は、幹線道路が走る大和の市街地とはまったく違う表情を見せる。佐賀市街から約30分、山あいの緑、清らかな川のせせらぎを観ながら、窓を全開にして走行していると、澄んだ空気を肺一杯に吸いたくなってくる。今回は、この地区に300年以上も息づく伝統産業「肥前名尾和紙」を紹介する。

肥前名尾和紙の由来                         


 遡ること今から300年、名尾地区は農業以外の主産業がなく、人々の生活のために新たな産業を生み出すべく地区に住む納富由助が「紙漉き」に着目した。当時紙漉きが盛んだった福岡県筑後へ修行に行き、紙漉きのいろはを身につけ地元に戻って指導したという。100軒以上の家が農業に加え、紙漉きをはじめ、紙産業が始まった。日本の紙は手漉きの和紙が本来の姿であったが、洋紙の流通が和紙をしのぐようになり、紙漉き工房が急速に減少していった。現在は、明治9年に創業した谷口家1軒のみとなった。


名尾和紙の大きな魅力


カジノキ(名尾和紙HPより)

 和紙は和紙でも、肥前名尾和紙の大きな特徴は、原料に楮(コウゾ)の原木である「カジノキ(梶の木)」を使用していること。この梶の木は、繊維が太く、破れにくい強い紙ができる。九州内の提灯制作では名尾和紙がトップのシェアを誇っているのは、この紙の特性によるところが大きい。強く、かつ灯りを通す薄さ、両方を叶える卓越した技術が求められているのだ。長崎の精霊流しや博多山笠など、祭りや伝統行事には欠かせないものである。博多座や太宰府天満宮で使用されている。


サラリーマンから紙漉きの世界へ


 学校を卒業後、サラリーマン生活を送っていた当主の谷口祐次郎さんは、25歳の時、当時は後を継ぐという気負いはなく、軽い気持ちで紙漉きの世界に入った。受注の中心を占めていた提灯の注文が減ってきている頃、父の背中を見ながら技術を覚えていく中で、何か新しいことができないかとアイデアを模索した。染料で色を付け、ピンク、うす紫、黄色、グリーン…、色々な風合いを見せる和紙を発表していった。



伝統を継承することと新しいものを発信すること


 元々は提灯やフルオーダーメイドの和紙を受注生産するのがメイン。和紙を元に、アートを感じる形状の作品にも挑戦した。たとえば、ランプシェードや、骨組みを一切使っていないオブジェ、漉き込みの加減で模様を描く美しい和紙など、見る者をハッとさせるものが敷地内のギャラリーにも展示されている。ハガキ、名刺、うちわ、便せんや封筒などの小物もある。



肥前名尾和紙=谷口さんのこれから


 伝統に基づいた和紙づくりと、新たなアイデアを盛り込んだ和紙づくり、両方の要素が未来への可能性を繋ぐことは明らかである。職人歴25年を超えた谷口さんにとって、300年続いてきた和紙を未来へとつないでいくことを使命としたい、と意気込みをみせる。紙に名は刻まれないが、幾世代超えても形として残ることに大きな価値と意味があると、50代になって見えてきたことがあるという。


肥前名尾和紙
<住所> 佐賀市大和町名尾4756
<電話> 0952-63-0334
<ギャラリー営業時間> 9:00-17:00
<店休日> 不定